映像制作の用語集
映像制作の現場で使われる用語を、発注する側にとって何を意味するかまで含めて解説します。見積書や進行表に出てきた言葉を引くのに使ってください。
01企画・準備
企画Planning
映像で何を伝え、どう見せるかを設計する工程。目的・ターゲット・訴求点を決め、構成に落とす。
ここが映像の出来の8割を決めます。見積書で最初に削られやすい項目ですが、削ると「きれいだが刺さらない映像」になります。
絵コンテStoryboard
カットごとの画・セリフ・秒数を絵と文字で示した設計図。
完成形を撮影前に合意するための書類です。絵コンテがない現場は、撮影後に「思っていたのと違う」が起きます。
香盤表Shooting Schedule
撮影当日の進行表。誰が何時にどのシーンを撮るかを一覧化したもの。
立ち会う場合は必ずもらってください。自分がいつ確認すべきかが分かります。
ロケハンLocation Scouting
撮影場所を事前に下見し、画角・光・電源・音・許可を確認する作業。
省くと当日の想定外が増えます。ロケハン費を削ると、撮影日が1日増えるリスクを買うことになります。
プリプロPre-production
撮影前の全工程(企画・脚本・絵コンテ・キャスティング・ロケハン・美術発注)の総称。
納期の半分以上はここに使われます。「撮影は1日」でも制作期間が4〜8週間になるのはこのためです。
キャスティングCasting
出演者を選定・交渉・契約する工程。
知名度より「その役に合っているか」で決めた方が結果が出ます。契約範囲(媒体・期間・広告出稿の可否)で費用が倍近く変わります。
スタイリングStyling
衣装・ヘアメイク・小物を設計し、画面の統一感をつくる工程。
縦型のショートドラマでは画面に占める人物の比率が高いため、ここの質が仕上がりに直結します。
02撮影
尺Duration
映像の長さ。15秒、30秒、3分など。
尺が長いほど高い、とは限りません。費用を決めるのはカット数と撮影日数で、尺そのものではありません。
カットCut
切れ目のない1つの映像単位。
カット数が増えるほど撮影時間が伸びます。予算を抑えたい場合、まず削る対象になります。
ワンカットOne-take / Long take
切らずに撮り切った長回しのカット。
技術的難易度が高くリハーサルが必要ですが、縦型ショートドラマでは没入感が出るため有効な手法です。
ヨリ・ヒキClose-up / Wide
被写体に寄った画(ヨリ)と、引いて全体を見せる画(ヒキ)。
縦型では圧倒的にヨリが強い。ヒキの画は情報が小さくなり、スマホでは読み取れません。
BロールB-roll
メインの映像(Aロール)に挿入する補助的な映像素材。
インタビュー動画で「話している人」以外に映る風景や手元の画のこと。これがあると単調さが消えます。
インサートInsert
説明や間をつくるために差し込む短いカット。
商品のアップ、時計、表情など。編集のテンポを作るために撮影時に確保しておく必要があります。
ラッシュRushes / Dailies
編集前の未編集素材。撮影したデータそのもの。
納品物に含まれるかどうかを契約前に確認してください。含まれない契約が一般的です。
MAMulti Audio
音声の仕上げ工程。ナレーション録音、効果音、BGM、音量調整を行う。
CMでは必須。省くと音のバランスが崩れ、素人っぽさが出ます。
03編集・仕上げ
オフライン編集Offline Edit
素材を並べて構成を確定させる、粗編集の工程。
ここで修正を出し切ってください。オンライン編集に進んでからの構成変更は、費用と日数が跳ね上がります。
オンライン編集Online Edit
オフラインで確定した構成をもとに、最終画質で仕上げる工程。
テロップ、合成、色調整などを本番品質で行います。
カラーグレーディングColor Grading
映像全体の色と明暗を設計し、作品の空気感をつくる工程。
安い見積もりは、ほぼ確実にここが抜けています。同じカメラで撮っても、これがあるかないかで仕上がりは明確に変わります。見積書で必ず確認すべき1行です。
テロップCaption / Subtitle
画面に表示する文字。字幕、説明文、話者名など。
SNSは音声オフで視聴されるため、縦型では実質必須です。
セーフゾーンSafe Area
どの端末でもUIに隠れず表示される画面領域。
縦型ではTikTokのUI(右のボタン列、下のキャプション)に重なるとテロップが読めません。上下15%・右15%は空けるのが基本です。
VFXVisual Effects
撮影後に映像へ加える視覚効果。合成、消し込み、CGなど。
「電線を消す」「看板を差し替える」といった地味な作業も含まれます。
修正回数Revisions
納品前に対応する修正の回数。
契約書で回数と「何を1回と数えるか」を必ず定義してください。ここが曖昧だと追加費用の原因になります。
04縦型・SNS
縦型動画Vertical Video
9:16の画面比率で制作される、スマートフォン視聴前提の映像。
横型をトリミングしたものとは別物です。最初から縦で設計しないと、画面の情報量が足りなくなります。
ショートドラマShort Drama
15秒〜数分の短尺で、物語構造を持つ映像コンテンツ。
「短い動画」ではなく「短いドラマ」。冒頭3秒で引き、最後まで観せる脚本設計が必要です。
フックHook
冒頭で視聴者の離脱を防ぐ引き。
縦型では最初の1.5〜3秒がすべて。ここで疑問か異常を提示できないと、内容に関係なくスクロールされます。
視聴完了率Completion Rate
最後まで再生された割合。
再生数より重要な指標。SNSのアルゴリズムはここを見て配信量を決めます。
ブランデッドコンテンツBranded Content
広告主が関与しつつ、広告に見えない形で作られたコンテンツ。
ショートドラマの主戦場。「うちは風通しがいい」とセリフで言わせた瞬間に、ただの広告になります。
IP化IP Development
キャラクターや世界観を資産化し、継続的に展開すること。
1本作って終わりでは埋もれます。2本目・3本目の設計があるかで3ヶ月後の結果が変わります。
05権利・契約
著作権Copyright
著作物を創作した者に発生する権利。
日本の著作権法上、MVやCMなどの映像は「映画の著作物」にあたり、著作権は原則として制作会社に帰属します。契約で譲渡を明記しないと、当初の目的以外に使えないことがあります。
著作者人格権Moral Rights
公表権・氏名表示権・同一性保持権からなる、譲渡できない権利。
譲渡できないため、契約書には「行使しない」と明記します。これがないと、後から編集の改変を止められる可能性があります。
原盤権Master Rights
音源そのものに発生する著作隣接権。レコード会社などが保有する。
MV発注で最も見落とされる権利です。JASRAC・NexToneが管理するのは楽曲の著作権であって、原盤権ではありません。市販音源を使うなら権利者から個別に許諾が必要です。
著作隣接権Neighbouring Rights
実演家・レコード製作者・放送事業者に認められる権利。
出演者の演技にも発生します。出演契約で利用範囲を明記しないと、後から差し止めを受ける可能性があります。
二次利用Secondary Use
当初の契約目的を超えて映像を使うこと。
SNS投稿はOKでも広告出稿は別途、というケースが非常に多い。広告に使う予定があるなら、最初に伝えてください。後から追加すると出演料の再交渉になります。
バイアウトBuyout
期間・媒体を限定せず、対価を一括で支払って利用権を買い切ること。
都度交渉が不要になる反面、初期費用は上がります。長期・複数媒体で使うなら結果的に安くなることがあります。
肖像権Right of Publicity / Portrait Rights
自分の容姿を無断で撮影・公表されない権利。
社員が出演する採用動画では、媒体・期間・退職後の扱いを書面で取り交わしてください。採用動画で最も多いトラブルの原因です。
考査Broadcast Review
テレビCMを放送する前に各局が行う内容審査。
WebCMより表現の制約が厳しい。将来テレビ展開の可能性があるなら、最初から考査を通せる体制の会社を選ぶと作り直しが不要になります。
06費用・見積
制作費一式Lump Sum
工程を分けず総額でまとめた見積の書き方。
これしか出てこない見積書は比較ができません。企画/演出/撮影/編集/仕上げの内訳を求めてください。
人件費Labour Cost
監督・カメラマン・照明・音声・スタイリストなど、当日入るスタッフの費用。
撮影日数×人数で決まるため、費用に最も効くのは撮影日数です。
スタジオ費Studio Rental
撮影スタジオの利用料。
ロケに切り替えれば下げられますが、天候リスクと許可取得の手間を負うことになります。
GRPGross Rating Point
テレビCMの出稿量を示す指標。視聴率の延べ合計。
テレビCMの「出稿費」を測る単位で、制作費とは別枠です。
相見積もりCompetitive Bid
複数社から見積を取って比較すること。
取るべきです。ただし総額ではなく、「工程ごとの内訳」「修正回数」「納品物の範囲」「カラーグレーディングの有無」の4点を各社に揃えて聞いてください。
最終更新:2026年9月1日
07テレビCM・放送
ノンモンNon-modulation
CMの開始点から0.5秒間と、終了点までの0.5秒間を無音にする放送局の決まり。
15秒CMで音を入れられるのは実質14秒です。ナレーション原稿を「15秒ぶん」で書くと必ず入りません。絵コンテの段階で14秒に収めてください。
業態考査Advertiser Screening
広告主の事業内容・法令適合・許認可を放送局が審査する工程。
その局で初めてCMを流す広告主ほど時間がかかります。絵コンテが固まる前から走らせておくのが安全です。
表現考査Content Screening
映像・音声・テロップの表現を放送局が審査する工程。素材考査とも呼ぶ。
絵コンテの段階で相談すれば、完成後の作り直しを避けられます。
CMコードCM Code
共通コード管理センターが発行する10桁の識別番号。
このコードがないと、映像が完成していても放送できません。
素材搬入Material Delivery
完成したCM素材を放送局へ納品すること。
放送開始日の数営業日前が期限です。土日祝を挟むと、実質2週間前には完パケが必要になります。局により基準が異なります。
媒体費Media Cost
CMを流す枠に対して払う費用。電波料とも呼ぶ。
制作費とは別のお金です。テレビCMでは媒体費のほうが大きくなるのが通常。「テレビCMを◯万円で」と言われたら、制作費か媒体費込みかを必ず確認してください。
完パケFinished Master
すべての工程を終え、そのまま放送・公開できる状態の映像。
「完パケ納品」と「素材納品」では請求範囲が違います。見積時にどちらかを明記してください。
演出のみ発注Director-only Engagement
企画・演出だけを外部の監督に依頼する発注形態。
監督は撮影スタッフや機材を用意できません。撮影を回す制作会社を別途1社用意する必要があります。
予備日Contingency Day
天候等で撮影が流れた場合に備えて押さえておく日。
屋外撮影で予備日がないと、雨天時に強行するしかありません。強行した画は、たいてい使えません。
相見積もりCompetitive Quotation
複数社から見積もりを取ること。
同じ絵コンテ・同じ尺・同じ納品条件で出さないと、比較したことになりません。条件が揃っていない相見積もりは、いちばん安く見せた会社が選ばれるだけになります。
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よくある質問
映像制作の用語がわからないまま発注しても大丈夫ですか
問題ありません。ただし見積もりと契約に直結する用語だけは押さえておくと、後の齟齬が減ります。具体的には「制作費と媒体費」「二次利用」「使用期間」「完パケと素材納品」「修正回数」の5つです。本用語集ではこれらを発注者の視点で解説しています。
見積書の用語で、特に注意すべきものはどれですか
「制作費一式」です。工程を分けず総額でまとめた書き方で、これしか出てこない見積書は他社と比較ができません。企画/演出/撮影/編集/仕上げの内訳を求めてください。総額が同じでも、企画費が厚い見積もりと撮影費が厚い見積もりでは、出来上がるものが違います。
「二次利用」とはどういう意味ですか
当初の契約目的を超えて映像を使うことです。SNS投稿は許諾されていても、広告出稿は別途というケースが多くあります。テレビCMをあとからWebに転用する、縦型に再編集する、静止画を切り出す——これらはすべて二次利用にあたる可能性があるため、発注時に予定を伝えてください。
「考査」とは何ですか
テレビCMを放送する前に各放送局が行う内容審査です。広告主の事業内容を見る業態考査と、映像表現を見る表現考査の2種類があります。WebCMより表現の制約が厳しく、短縮もほぼ効きません。将来テレビ展開の可能性があるなら、最初から考査を通せる体制の会社を選ぶと作り直しが不要になります。
「完パケ」と「素材納品」は何が違いますか
完パケは、すべての工程を終えてそのまま放送・公開できる状態の映像です。素材納品は編集前の映像データを指し、通常は納品物に含まれません。請求範囲が変わるため、見積もり時にどちらかを明記してください。